干し柿の作り方

毎年知人から柿(平核無柿)をもらってベランダで干し柿を作っています。干し柿の作り方は至ってシンプル

  1. 皮をむいて
  2. 干す

以上終わり。

とはいえ、後悔しないための幾つかのコツはあります。

押さえておきたい前提・渋み

柿の渋(カキタンニン)は、水溶性だから舌の上に乗せたとき渋いと感じる。「渋が抜ける」というのはカキタンニンがなくなるのではなく、不溶性に変わることで渋はあるけど感じない状態のこと。

果肉内で酸素不足に陥るとカキタンニンが不溶性に変わるため、干し柿は①皮をむいて表面を乾かし酸素を通さない膜をつくる②果肉内部を酸素不足にしてタンニンが不溶性に変わるのを待つという手順。

果肉内部を酸素不足にするならば、皮をむかない方が手っ取り早いと思われるでしょう。その通りで、放置してもいずれ甘くなります。しかしこの場合、中の水分が抜けないため、果肉がどろっとしたいわゆる「熟柿」になります。当然ながら、保存性はありません。

干し柿の吊るし方
枝をT字型に残した柿はぐるっと紐を一巻き。自重で絞まるので、最後の柿だけ縛ってやればOK。
干し柿の吊るし方
ヘタで吊せない場合は竹串にさして、はしごがけにする。

押さえておきたい前提・甘み

当然ながら、柿の実に含まれる糖の量は最初から最後まで変わらない。渋みを感じなくなるから甘みを感じるだけ。ただし、水分ががっつり減るので糖度はかなり上がる。

植物には細胞壁があり、水も糖もこの中に入っている。このまんま乾燥するとカチカチになった細胞壁の中に甘みが閉じ込められ、カプセルに入ったような状態になるため、食べても甘みを感じない。

なので上記①②にもう一つ③表面が乾いたらモミモミして細胞壁を壊すを追加します。

モミモミにはもう一つ重要な役割があります。干し柿の表面には糖が結晶した白い粉が吹きますが、経験上果肉内部から染み出た糖(つまり果汁)がないときれいに吹きません。冷蔵庫で保存しても粉が吹かなかったところにはカビが生えてきます。しっかり揉んで、細胞壁から果汁を解放することが、甘さと保存性の両方に関係してきます。

既に熟している柿は小さくなる

柔らかくなって皮を剥いていると果汁が滴るような熟した柿は、干すとすぐに小さくなり作りにくいです。

熟しているというのは、細胞壁が崩れかけている状態ですから、すぐに水分が抜けてしまいあっという間に小さくなるのです。しかも常に内部から果汁がにじみ出すので表面が乾きにくく従ってモミモミしづらい。もう一つ理由は分かりませんが酸化も早いのですぐに黒くなります。渋は抜けますが、良い状態の干し柿を作りたい場合は除いた方が良いです。

干し柿づくりのコツ
皮はできるだけ全部剥く。最初はわずかの剥き残しでも、実が縮むため食べるときにはすごく邪魔。ヘタはニッパ(なければ爪切り)で切る。乾いてからの方が切りやすい。
はしごの結び方
輪っかを作り、その中へ紐をU字に入れ、黒丸のところへ串を通し、紐を上下に引く

カビの問題

残念ながら私はまだ干している間にカビが発生した経験がないので、どうすれば防げるか分かりませんが、風通しがよければ新潟県のように湿度が高くともカビは生えてこないようです(雨に濡らすのは論外として)。言い換えると、風通しが悪いところでは難しいということ。その点マンションのベランダは好条件が揃っているので、マンション住まいの人にこそ干し柿を作って欲しい。

干したらアルコールを噴霧するという作り方も紹介されており、噴霧あり、噴霧なしで試してみましたがどっちもカビは生えませんでした。カビの胞子は絶えず空中浮遊しており、湿っていて栄養等条件が揃えばそこで生長するわけで、すぐに揮発して効果が一時的なアルコール消毒をしてみても意味はないという結論に達し、今はやっていません。気をつけるとすれば、短時間で表面の水分を飛ばすように晴れた日に干し始める、皮を剥いた状態で室内に長く置かないくらいのことでしょうか。

柿のモミモミ